世界遺産「高野山」では、弘法大師「空海」の開山から千二百年の長きにわたって、社会と人々の安寧を祈りつづけてきました。たくさんの僧侶たちが日々の勤めに汗をながし、祈りを捧げつづけて、その一生を終えていきました。

そんな高野山にあっては、そこが修行の場所であることから、作物を栽培するような耕作地がありません。また戒律で殺生が禁じられていたため、もちろん肉や魚を食べることもできませんでした。そのため僧侶たちが口にしていたものといえば、高野山の周辺および高野山麓から持ち込まれた、限られた野菜や穀物だけだったのです。貴重な野菜や穀物は高野山で修行する僧侶たちにとっての日々の糧となり、あの弘法大師も口にされていたと言われています。

高野山へ持ち込まれた野菜や穀物は、巧みな料理法をくわえられたことで、芸術的な精進料理へと姿を変えていきます。高野山をささえるという使命をあたえられたことで、これらの野菜や穀物には役割が生じることになりました。そこに暮らす人たちの舌を飽きさせることのないように、栄養価が高く、滋味に富んでいる必要があります。あるいは、限られた食材だけで身体の健康を維持していくために、年間を通してさまざまな品目を提供する必要もありました。これらが結果として、わたしたちがいま栽培している高野山麓精進野菜®の特徴にも繋がっています。

このように高野山と歩みを共にすることになった、高野山麓精進野菜®の歴史。その伝統ある野菜の歴史を未来へつなげていくために、高野山麓ではいまでも野菜を栽培しています。